平成29年11月十三会例会

   日 時:2017年11月13日(月) 19:00〜21:00
   会 場::ソーホーかごしまC会議室 (鹿児島市照国町13−15)


 ●講 演 
西郷隆盛 十の『訓え』 語り継がれる『激動の時代の生き方』

 ●講 師 西郷隆文先生(NPO法人西郷隆盛公奉賛会 理事長)
  【プロフィール】
   陶芸家。1947年、奈良県生まれ。鹿児島で育ち、1978年、弟とともに
   母方の出自である日置島津家の菩提寺跡に「日置南洲窯」を開く。
   2011年、現代の名工受賞。2012年、黄綬褒章受章。県薩摩焼協同組合初代理事長。
   2004年にNPO法人「西郷隆盛公奉賛会」を設立。西郷精神を次世代に伝える活動を行っている。


 【 講  演  内  容 

 来年の明治維新150周年、大河ドラマ「西郷どん」の放映を前に、西郷さんの曽孫である隆文先生から貴重なお話を聞くことができました。

 苗字が「西郷」であり、名前に「隆」の文字が入ることから、幼い頃より多くの方から「幼少よりその薫陶を得て、西郷さんの高徳により育まれてきたのではないか」と思われたことがありました。
 奈良県に生まれた私は、ある時期までは先祖について特に考えたことはありませんでした。小中学校と父親の仕事の都合で転校が多かった私は、幼い頃からよくケンカをしていました。理不尽ないじめに対しては真っ向から立ち向かい、ことごとく蹴散らしてきました。
 「20歳を過ぎたら、新聞に名前が出ますよ」
 母から言われた一言が先祖について考えるきっかけになりました。西郷家の末裔としてご先祖や一族の方々に迷惑がかかるようなことは慎みなさいという意味だったのでしょう。それ以来、私は西郷隆盛の末裔であり、西郷家の人間であることを強く自覚するようになりました。

 西郷さんの「訓え」の根幹には薩摩藩の「郷中教育」があります。郷中の特徴は「教師なき教育法」で先輩が後輩を指導し、同輩は互いを支え合います。自らが生徒であり、教師であり、学びつつ教え、教えつつ学び、郷中皆が一丸となって成長していきます。
 西郷さんが学び育った下加治屋町の郷中は、西郷さんだけでなく、大久保利通、大山巌、村田新八ら明治維新を成し遂げ、近代国家・日本を作る上で多くの貴重な人材を輩出したところです。1つの郷中からこれほどの偉人を輩出したところは他に例がないでしょう。

 「負けるな」「嘘をつくな」「弱いものをいじめるな」。郷中教育の中で最も大切とされる三つの教えです。「迷ったときは、損得ではなく善悪で判断せよ」「勇気だけは誰にも負けてはならない」「理不尽は理不尽のままでよい。自分が理不尽なことをせねば良い」…我が家に伝わる「十の訓え」もこの郷中教育の教えがもとになっています。

 中学生を相手に話をする機会がありましたが「先祖の墓参りをしていますか?」と聞きます。西郷さんが月照とともに錦江湾に入水自殺を図り、月照が死んで自身が生き永らえたことが終生の負い目になり、西郷さんは明治維新を成し遂げることになったわけですが、もしその時西郷さんが死んでいれば、今の私はいなかった。そう考えると過去の先祖があって今の自分があるということを、墓参りの機会に思いめぐらしてみる必要があるのではないでしょうか。