平成31年3月十三会例会

●例 会 内 容

  日 時:2019年3月13日(水)PM7:30 【会 場:コルテーヌ7F】


●講 演

 『鹿児島の経済状況と中小企業の中長期的課題

●講 師
 福留 一郎 氏(九州経済研究所経済調査部部長)



講 演 内 容

  大河ドラマ「西郷どん」が終了した今年、鹿児島の経済はどうなっていくのか。また今後の鹿児島経済の展望などについて専門家である福留先生に分かりやすく解説していただきました。

 県内経済を外部から分析する仕事を2009年からしています。県内の主要企業500社に定期的にアンケートを取り、業況などを毎年4半期に1回ずつ出すなど、県内経済の動向を分析するのが主な仕事です。
 直近の県内企業の業況推移を分析すると17年は右肩上がりでプラス水準に達しましたが、18年は右肩下がりでした。業況が悪いと感じている企業が増えていることを意味しています。経営上の最大の課題として挙げられるのが人手不足です。近年人手不足が言われ続けていましたが、実際にダメージが出ているのを感じている企業が増えています。
 人手不足解消のためにどんな対策をとっているかアンケートすると、賃金の見直しや待遇改善などがほとんどです。給料を上げればその分、企業の利益は下がることを意味しており、抜本的な改善は難しい。将来の無人化、省力化を目指した設備投資に取り組んでいるのは15%に留まっています。これは鹿児島に限らず全国的な傾向です。
 今年10月に消費増税が決まっています。89年の導入に始まって税率が5%、8%と上がったときには景気に大きなダメージを与えたり、思ったほど影響がなかったりと様々でした。今回の10%の導入は大きなダメージがあり、軽減税率が複雑でわかりにくいなど課題が残っています。10月増税と安倍さんは言ってますが、景気への影響を考慮して延期する可能性もあると私は考えます。

 人手不足とも大きくかかわるのが人口減少です。現在、鹿児島県の人口は15年で約162万人、72万世帯。25年にはこれより13万7000人、45年には44万4000人減少すると言われています。生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳の割合が下がり、65歳以上の高齢者が増えるいわゆる超高齢化社会です。結婚適齢期といわれる25歳から39歳までの男女比は九州内でも男性が多い、女性が多い、今後減少して逆転するなど各都市によって特徴があります。鹿児島市の場合は女性が多い傾向にあります。
 県内、全国とも空家が増えているのが問題になっていますが、鹿児島は全国平均を上回るスピードで増えています。直近のデータでは全国13.5%に対して鹿児島は17%、約14万7000戸が空家となっています。鹿屋市、霧島市、薩摩川内市の合計戸数とほぼ同じ戸数が空家という状況です。マンションの空室などのように人が入る見込みのある空家よりも、高齢化が進むなどで住む人がいなくなった空家の割合が高いです。私の故郷の頴娃町ではNPO法人が空家を活用して民泊のサービスを始めました。課題を解決して起業する。今後の課題解決のヒントとして注目したいところです。

 鹿児島県は農業県といわれるように第一次産業が盛んな県です。農業生産量は北海道に次ぐ全国2位を誇ります。一方で食料品製造業の付加価値率は全国46位と下から2番目。原材料が良いだけに加工しないでも十分美味しくて売れるわけですが、どういった付加価値をつけていくかは今後の課題です。農家の高齢化問題も顕著で、農家数は半減した一方で高齢化率は倍増しています。耕作放棄地はいちき串木野市なみの広さです。こういった課題を今後どう解決していくか、大事になってきます。

 かつて「飛ぶが如く」「篤姫」の大河ドラマが観光客を呼び、経済効果があったように、昨年の「西郷どん」でもいくつかの経済効果がありました。「篤姫」の時は鹿児島市と指宿市に限定されていた観光客が、奄美群島など県内各地まで派生したことが「西郷どん」の一つの特徴です。
 観光は今後の鹿児島の経済成長を考える上でもカギを握る分野です。ところが県内でスイカが使えないなど、交通アクセスのインフラ整備の遅れなど様々な課題があります。「MaaS」(モビリティー・アズ・ア・サービス)という言葉があり、スマホ一つですべての交通移動手段の予約が可能になるシステムが今、注目されています。利益をどう配分するかなど、解決すべき問題は様々ありますが、今後はぜひとも必要になってきます。
鹿児島市が今後の都市成長可能性の全国ランキングで、ポテンシャルランク2位、総合5位になったように鹿児島は大きな可能性を秘めています。農林漁業、観光、文化、鹿児島の強みを掛け合わせ、魅力ある街づくりをしていくことが鹿児島に生きる私たちに課せられています。