平成30年3月十三会例会

●例 会 内 容

  日 時:2018年3月13日(火)PM7:30 【会 場:歯科医師会館 第2研修室】


●講 演

 『仮想通貨について

●講 師
 小屋敷 馨司氏(財務省九州財務局鹿児島財務事務所理財課長)
【プロフィール】
1974年生まれ。姶良市加治木町出身。鹿児島大法文学部卒。97年、大蔵省(現財務省)九州財務局入局(大分財務事務所理財課)、金融監督庁検査局、鹿児島財務事務所財務課、九州財務局総務部総務課などを経て、2016年より現職へ。


講 演 内 容

ビットコインなどの「仮想通貨」がこの頃取り沙汰されることが多いですが、その基本的な概念や仕組みさえよく分かっていないことも多いです。財務省の小屋敷先生に詳しく解説してもらいました。

 仮想通貨は、インターネット上で自由にやりとりされ、通貨のような機能を持つ電子データのことです。
 銀行を使わなくても、個人がインターネット上で自由に移転させることができるため、近年、ショッピングなどの際に、支払いや資金決済ツールとして利用される機会が広がっています。その理由の一つとして、仮想通貨と法定通貨を交換するサービス(仮想通貨交換業)を行う業者が登場し、利用者と仮想通貨の接点が多くなったことが考えられます。
 こういった中、2017年4月から仮想通貨に関する新しい制度「改正資金決済法」が施行されました。我々財務所はこの法律に基づき、業者を監督する立場にあります。
 仮想通貨と法定通貨の違いは、法定通貨は中央銀行や政府が発行体ですが、仮想通貨にはありません。法定通貨は発行量が無限ですが、仮想通貨は有限です。法定通貨は価格変動性が低いですが、仮想通貨は極めて高いです。
 電子マネーとの違いは、電子マネーも発行体が存在します。利用範囲は電子マネーは発行体が提携している店舗以外では利用できないです。仮想通貨は店側が仮想通貨の受け入れの用意をするだけで決済可能です。保有している電子マネーを他者に融通できませんが、仮想通貨は不特定に対して移転が可能で流通性があります。

 仮想通貨の代表例として「ビットコイン」があります。ビットコインは、2008年、「サトシ・ナカモト」名でその仕組みが論文で発表され、09年にこの論文に興味を持った世界中のソフトウエア業者が協力し、ビットコインの理論を実現するためのソフトウエアが開発され運用を開始しました。
 13年にオンライン闇市場「シルクロード」運営者の逮捕などにより認知度が高まり、1ビットコイン約12万円まで上昇しました。14年2月には世界最大の取引所だったMt.Gox社の破綻により、1ビットコイン約4万円にまで下落したものの、同年4月には日本初のビットコインATMが誕生するなど、少しずつ定着してきています。その後、中国政府の規制などで下落局面はありましたが、相場は上昇基調で17年12月には急上昇して220万円超になったことも。現在は1ビットコイン約120万円で推移しています。このように投機的な側面が大きく、価格の変動性が極めて高いものであることが分かります。
 ビットコインのユーザーとなるためには、まずネットワーク上に「ウォレット」を作成します。当該ウォレット間でビットコインの移転が可能になります。ビットコインの全取引履歴は、ネットワークで共有される電子的な台帳「ブロックチェーン」に記録されます。
 「採掘」と呼ばれる取引の認証を行った者に、その報酬としてビットコインがシステム上、新規に発行されます(特定の発行体は存在しない)。ビットコインは取引の認証(採掘)、交換所を通じての購入、他者からの移転によって入手可能です。
 メリットとしては、銀行などの第三者を介する必要がないので、個人間送金が可能です。発行体が存在しないため、世界共通の通貨として使用可能です。24時間365日取引可能で株式やFXの取引に比較して、手間をかけずに移管(送金)が可能です。発行上限があるため、インフレになる可能性も低いです。
 デメリットとしては価格変動が非常に激しく、暴騰暴落を繰り返しているため、投機的な側面が強いです。特にレバレッジ取引の場合、価格変動率が高いため、リスクも高くなります。国による価値の担保がありません。ただし日本の場合は預金1000万円までは補償されており、取引所によっては一定の補償もあります。クレジットカードのように不正利用された場合などの払戻制度もありません。利用可能な場所も少ないです。国内ではメガネスーパー、ビッグカメラ、コジマ(一部店舗)で、鹿児島県内は居酒屋など3店舗というのが現状です。