平成29年7月十三会例会

●例 会 内 容

日 時:平成29年7月11日(火) 19:00〜21:00
会 場::鹿児島県歯科医師会館 (鹿児島市照国町13−15)


●講 演 
調所笑左衛門広郷の財政改革から学ぶ中小企業の財政改革

●講 師 調所 一郎 氏


講 演 内 容

【経歴】
1960年生まれ 慶應義塾大学経済学部卒業 起業の後、現在は民間シンクタンク・大樹総研 執行役員。
慶應義塾大学経済学部卒業と同時に医療法人、予備校、広告代理店等をクライアントとするコンサルティング会社設立。
刀剣刀装研究家、経済、歴史研究家等として、執筆、講演活動。
鹿児島県歴史資料センター黎明館企画展「薩摩拵 -武の国の刀装-」展(2005年)、および「薩摩刀 波平 -武の国の刀工-」展(2007年)を企画。薩摩拵については、研究第一人者としての著書、「薩摩拵」(里文出版)改訂増補新版(四版)を出版。
日本の未来へ、財政破綻回避手段を提言した『永久国債の研究』(光文社)ペーパーバックス(財務官僚等と共著)もある。
薩摩藩家老を務めた調所廣郷の7代子孫[1]。父・廣志は先祖との訣別を意図し、息子達の名前に「廣」の通字を使わなかった[2]。母方は幕臣、佐幕派の家系で、明治以降は内務省、宮内省官僚。大正から昭和初期の内務省官僚(警保局)・朝鮮総督府平安南道知事を務めた安武直夫(旧筑後柳川藩士族)は曾祖父である[3]。
現在、元鹿児島県工業試験場長・野元堅一郎に師事し、薩摩焼を研究中である。また鹿児島県より薩摩大使を委嘱される。

【著書】
?『薩摩拵』(里文出版)2003年 初版
?『永久国債の研究』(光文社)ペーパーバックス(財務官僚等と共著) 2009年初版
?『刀と日本語』(里文出版)2015年 初版

【内容】
 講師の調所一郎氏(大樹総研客員研究員)は、薩摩藩における藩政改革を成し遂げた、調所広郷の昆孫(ひ孫のひ孫)にあたる。
氏は薩摩藩の天保の改革を次のように分析する。
  ○財政赤字の背景
   ・領内人口に於ける武士の高比率(約25%、他藩平均は5%)
   ・やせた土地(シラス台地)ゆえの低生産性
   ・徳川家、公家等との婚姻による費用増大
   ・台風の常襲地帯、霧島・桜島の噴火、火山灰による田畑埋没
  ○天保の改革のポイント
   ・500万両の250年賦無利子返還
   ・国産品、特産品の徹底した生産管理とブランディング(役得廃止、黒糖、ウコ
    ン、ハゼ蝋、菜種)
   ・唐物貿易の拡大(琉球、中国、富山の薬売り)
   ・軍制改革(自顕流の採用)
 調所広郷は、城下士の中では下級(薩摩武士全体では上位10%)であったが、エリート、大企業ではなく、中小企業的柔軟な発想も改革遂行に役立った。
 500万両の借金の250年返済については、商人に特産品や密貿易品を優先的に扱わせるなどして、バランスをとり、お互いが損をしない形をとっていた。
 その他、専門の刀剣に関する話題、今に伝わる広郷の人柄から、現在の政治、経済、国際情勢に至るまで話題は多岐にわたった。