●講 演 「中小企業の人材確保における時代の変化」
●講 師 末吉剛士氏 (株式会社マチトビラ 代表取締役)
「中小企業の人材確保において、時代の流れがどうなっているかを知り、今後どうするかを考える」というのが 今回のメーンテーマでした。 本格的な高齢化、人口減時代を迎え、中小企業は人材確保が難しくなる時代になりつつあります。 今年度から、中小企業庁は、人材確保に苦戦する中小企業への支援事業に乗り出しました。鹿児島では、末吉先生の マチトビラと、南日本リビング新聞社、創企堂の3社共同で「GOOD WORK KAGOSHIMA」(GWK) と命名した支援事業が始まりました。 本会は人材確保難に直面している中小企業経営者も多く、講演後の質疑応答でも活発な議論となりました。 1労働市場の変化 日本の将来推計人口によると、今から5年後の2020年には人口数が2%減少します。 生産年齢人口といわれる15−64歳が4.4%減少するのに対して、65歳以上の6.4%増加するといわれています。 有効求人倍率は過去最高水準の上昇傾向があり、失業率は下降傾向にあります。この傾向自体は好ましいことですが、 裏を返せば全産業で労働力の獲得競争が激化し、待遇面などで有利な都会の大企業に良い人材が集中しやすくなることも 意味しており、鹿児島など地方の中小企業は人材確保に工夫が必要な時代になってきました。 2これからの人材確保の狙い目 他社に負けない採用の魅力を強化するにはどうすればいいか? 戦わずに勝つ潜在労働力とは何か? これからの中小企業が人材確保で考えていかなければならない命題です。例えるなら、どこに「ラブレター」を出せば 「相思相愛」になれるかを考えようということです。 労働市場に目を向けると、主婦人材やシニア人材が今後の労働力として注目されています。統計では働くことを 希望する主婦人材は約300万人いるといわれています。主婦が働きたいと考える理由は主に「社会とのつながりを得るため」 「自分が成長するため」が上位です。一方、働きたいけど働けない理由の上位は「希望に合う時間、日数の案件が少ない」 となっています。 シニア人材は就労意欲が高いことが特徴です。60歳以上の80%、70歳以上でも50%は労働意欲があるとされています。 シニアが働きたい主な理由は「社会とのつながりや生きがいを持ちたい」「社会に貢献したい」ですが、今のところ県内では シニア層を新規雇用するところがないのが現状です。 母数は少ないですが、雇用条件、職場環境、仕事内容などが原因で離職率も高い若者層も、人材確保では狙い目です。 若者は仕事に対して「やりがい」と「安定」を求め、仕事を探す際は「仕事内容」「給与」「福利厚生」を重視している といわれています。 3我々が行っている支援事業 GWKでは、南日本リビング新聞社さんが女性、創企堂さんがシニア、弊社が若者を主に担当して、県内の中小企業に 対して人材確保の支援を実施しています。 人材確保を考える上で、主婦、シニア、若者各層の有効活用が考えられますが、それぞれにニーズがあり活用方法が違います。 採用する側がどういった人材を欲しているかを明確にして、ターゲットを絞って採用活動を行う必要があります。いわば採用にも 「マーケティングの発想」をとってみましょうということです。 GWKのホームページでは企業の求人情報を無料で掲載しています。専属ライターがお伺いして、取材、撮影し、 他の求人媒体には載せられない企業の魅力を訴求するお手伝いをしています。取材費などの費用に関して、 助成で賄っているので企業の負担が今のところないのも特徴です(※来年度以降有料化の可能性もあります)。 費用はかかりませんが、手間はかかります。手間をかけてでも人材確保を強化したい企業の参画を募っているところです。 始めて約半年の事業で、有益な採用ができたかどうかの判断は時間が経ってみないと分からない部分もありますが、 GWKのHPに求人を出していたある老舗水産加工会社に、「自分の求めていたものがある」と別の食品会社から 転職した人がいました。 雇用の方法に絶対というものはありません。私たちも日々試行錯誤の毎日です。これまでの活動を通して言えることは、 企業側は雇用条件の最低ラインを決め、他の社にここだけは負けないという優位性をひとつ打ち出して、 一点突破を狙うことも大事なのではないかということです。