平成27年3月十三会例会

●例 会 内 容

  日 時:2015年3月13日(金)19:30


●講 演

「放送を通じて鹿児島から伝えたい文化―中小企業経営者にも知ってもらいたいこと」

●講 師
岡田祐介(おかだ・ゆうすけ)氏 MBC南日本放送アナウンサー

【プロフィール】
11977年1月20日、佐賀県生まれ。鶴丸高、法政大卒。99年にMBC南日本放送に入社し、アナウンサーとして数々のテレビ・ラジオ番組の制作に携わる。14年10月からは夕方4時からの情報番組「かごしま4」のメーンパーソナリティーを担当。


講 演 内 容

●「ふるさと力」をつけるために

 昨秋時点でMBCテレビの自社制作率は15・3%でした。キー局や大都市圏の放送局を除く全国の地方局の平均が8%といわれている中で、高い比率になっています。自社で番組を作るよりも、キー局などの番組を流している方が労力も少なく、利益も高い。MBCも制作に人数をかけられるほど余裕のある局ではありません。今制作現場はギリギリのところでやっているのが現状です。それでも自社制作にこだわるのは、今後の人口減少社会を見据えた際に、地方局が生き残るためには、精神的、経済的「自立」が何より大切だからです。
今や放送業界はインターネットなど新しいメディアの台頭で広告収入が減り、業界全体が大きな転換期を迎えています。そんな時代だからこそ、地域が持つ本当の底力=「ふるさと力」をつけていくような放送を目指しています。
「ズバかご」や、昨年10月より放送が始まった「かごしま4」などMBCの自社制作番組の特徴は、県内各地にあるコミュニティーFMやケーブルテレビなどの地域メディアと連携し、より地域に根差し、役立つ情報の発信を目指している点です。これらの取り組みも、地域メディアと手を携えながら、「ふるさと力」を発信する試みです。

●アナウンサー、スポーツ実況を志したわけ

 中学時代からラジオが好きで、高2の秋に放送部に入部した頃から将来はアナウンサーになりたいと考えていました。法政大に進学し、大学の自主マスコミ講座や勉強会、アナウンスアカデミーなどを通じて、様々な人たちとの出会いがあり、アナウンサーになりたいという夢を強く持つようになりました。
 アナウンサーの中でも、スポーツ実況をやってみたいという気持ちが強くなりました。就職活動で広島の局を受験していたとき、広島市民球場のカープ戦を見る機会がありました。そこでは学校帰りの高校生や、仕事帰りのサラリーマンたちが、当たり前のように球場に応援にやってきて盛り上がっている。地元の球団を応援することが日常生活に密着している。プロスポーツ球団を持たない鹿児島では考えられない光景でした。
 確かに鹿児島にプロ野球はない。しかしJリーグならできる可能性があるのではないか。いつか生まれ育った鹿児島にJリーグチームができて、その試合を実況する。そんなことを夢見てMBCに入社しました。
入社して野球、サッカー、バスケットボールなど9競技ほど実況する機会がありました。レノヴァ鹿児島のホームゲームでは場内MCも担当しています。広島ほどの熱狂はまだありませんが、サッカーの鹿児島ユナイテッドやバスケットのレノヴァなど、鹿児島にもようやく「プロスポーツ」と呼べるチームが産声をあげました。自分の仕事を通じてこれらを育てていきたいと考えています。

●鹿児島にもプロスポーツ文化を!

 プロスポーツを考えた時に「鹿児島には大企業がない」「お金がない」とよくいわれますが、本当にそうでしょうか? 2011年の県内総生産のランキングで鹿児島は26位です。単純な比較はできませんが、25位の熊本、27位の愛媛にはJ2があり、最下位の鳥取にさえ、J3のガイナーレ鳥取があります。人口10万人当たりのパチンコ店の数は鹿児島が日本一だそうです。
 プロスポーツを「お金に余力のあるところが浪費する」ものと考えるのではなく、お金を投資することで地域を活性化するコンテンツにみんなで育てていくという発想が大事なのではないでしょうか。
 地元にプロスポーツがあることで、家族の会話のネタになったり、その姿を見ることが子供たちの夢や憧れにつながります。地元のプロチームが全国を舞台に戦うことは、同じように日々奮闘している鹿児島の産業に勇気と自信をもたらしてくれます。
 精神的なメリットだけでなく、例えばサポーターの移動で交流人口が増え、経済効果が期待できます。スポーツは、今後新たな成長が見込まれる「産業」とは考えることができます。
 鳥栖では、地元小学生が「サガン鳥栖のスタジアムを満席にしたい」という夢を、市の青少年健全育成事業「夢プラン21」に採用し、チームと行政とスポンサーと地域住民が一体になって観客動員を増やした結果、チームがJ1昇格争いをするほどの力をつけました。12年に昇格を果たし、14年はJ1優勝争いをするほどの強豪へと急成長しました。
 7400人程度だった平均入場者数は約1万4000人まで増え、昇格を果たしたことで駅前のあるホテルの宿泊者数は7、8倍に増加したそうです。今やサガン鳥栖は鳥栖市民の街への誇りと自信の象徴へと成長しました。鹿児島にもぜひそんなチームができて、それを実況することを夢見ています。

 2020年に鹿児島国体が予定されており、それをにらんで県体育館の移設問題が取り沙汰されています。賛成、反対様々な意見がありますが、「イベントのためだけに箱モノを作る」というところで終わってしまっているのが残念なところです。

 日本政策投資銀行は、スポーツ施設に映画館、ライブハウス、ショッピングモール、老人ホームなどを併設することで、地域の交流空間としての多機能複合施設にするという「スマート・ベニュー」構想を提案しています。まだ日本でそれを実現した施設はありませんが、欧米ではプロバスケットやサッカーチームのホームスタジアムに、ホテルや映画館などを併設した「スマート・ベニュー」の実例があるそうです。鹿児島だったら温泉や、レストランが併設し、大きなスポーツイベントがなくても、人が日頃から集まるような場所ができないものでしょうか。
 国体というと、地元国体で成績を残すために、ジュニア強化といったことだけが論じられていますが、ハード面からこのようなスポーツ施設を活かした街づくりを考えることも大事だと考えます。

 放送の仕事を通じて、こういった活動を発信し、鹿児島に新たな文化を創造し、鹿児島の子供たちに「地元でも夢をかなえる場所がある」と胸を張って言える鹿児島にすることが私の大きな夢です。