平成27年2月十三会例会

●例 会 内 容

  日 時:2015年2月13日(金曜日)PM7:30


●講 演

中央政治と地方政治への雑感

●講 師
井上剛(いのうえ・ごう)氏 鹿児島市議会議員(※十三会会員)
【プロフィール】
1969年6月19日生まれ。鹿児島市出身。伊敷中、鶴丸高、早稲田大卒。鹿児島総合研究所を経て鹿児島市議へ。現在4期目。


講 演 内 容

今回の例会は鹿児島市議で十三会会員でもある井上先生に、鹿児島市議の立場から見た国際政治、中央政治、地方政治について思うことを語っていただきました。

1=混迷を深める国際政治
 現在は、中国や、「イスラム国」などに代表されるようなイスラム圏の台頭により、欧米を中心とした既存の世界秩序が大きく変化しようとしている。長年、「世界の警察」を自任してきたアメリカの力も衰え、G7、G8、G20などこれまで世界をリードしてきた「先進国」と呼ばれる国々の影響力も小さくなり、「Gゼロ」といっても過言ではない時代だ。
 国連も、「イスラム国」に代表されるような現在の国際紛争には対応できていない。「世界政府」の創設を模索する動きもあるが、今のところ実現は厳しい。そんな中で日本が進むべき道は、自由と民主主義を基調とする国々と連携しつつ、そうではない国々とは大人な対応を心掛け、自立した国家を目指すことだ。

2=地方衰退へ対応できない中央政治
 増田寛也元総務相が昨年、このまま少子化が進めば2040年までに日本の896の市町村に消滅の可能性があるという衝撃の発表をした。実際、鹿児島県の人口は年間1万人ずつ減っている。しかし、女性の出生率が1%台になった1970年代から、近い将来そうなることは予想されたことだった。それでも日本は経済成長一辺倒でそのことへの対策をとってこなかった。
 今ようやく「地方創生」へ国も本気で取り組み始めたが、国の借金も1000兆円を超え、苦しい台所事情である。「プレミア付き商品券を配る」などのアイディアで地方創生が実現できるとは到底思えない。創生に向けてのアイディアは地方が出し、それを国がサポートするというかたちが望ましいだろう。
 そのためには国は外交、防衛などに専念し、内政面では思い切った権限移譲を地方にするべきだ。道州制の実現などはその延長線にある。実際に、権限委譲が進んでいるドイツでは、国の収入に見合うだけの支出ができて財政の健全化を達成している。
 権限を委譲されたからには当然、地方も自分たちで責任を負うことになる。国に甘えることなく、自分たちの地方は自分たちで作るという時代にしていかなければならない。多様な民意を反映させるためには、都道府県議会においては、1・2人区を廃して、広域的な選挙エリアを作り、死票を減らす仕組みづくりも必要だ。

3=地方政治の実態(鹿児島市政を事例に)
 住吉町15番街区、ドルフィンポート周辺などのウオーターフロント地区、鹿児島駅周辺、鹿児島中央駅西口、マリンポート周辺など、鹿児島市が主導する都市整備はうまくいっているだろうか? 市民の意見を反映した有効活用というよりは、市当局の思い通りにことが進んでいないだろうか?
 鹿児島市の市議会議員定数は現在50人。しかし全国を見渡してみると、鹿児島市と同程度、あるいは鹿児島市よりも人口多い政令市、中核市でも40人台の議員定数なところが多くある。鹿児島市議会でも07年度から定数削減を求める陳情を繰り返しているが、賛成議員が少なく否決されてきた。今年の2月議会で48人にする議案に対して21人の賛成があり、ようやく前進の兆しが表れた。
 人口70万人の都市でも40人台の議員数のところがあり、多くの市民も定数削減には賛成している。一方で、定数減で「市民の意見が届かなくなる」との反論もある。議員には住む地域の声を届けると同時に、全市的な視野を持つことも求められる。最終的には有権者が決めることだが、最少の経費で最大の効果をあげる仕組みを作るために、鹿児島市政が変革する試金石になると考える。

4=それでも政治は一歩一歩前進
 国際、中央、地方、それぞれに問題は抱えているが、一歩ずつ前進はしている。
 国政において小選挙区制ができたことで、政権交代の可能性が高くなった。野党にも政権交代の可能性がある分、与党も緊張感を持って政治に取り組んでいる。
 鹿児島においても「鶴丸城御楼門」復活プロジェクトなどのように、民間がアイディアを出し、それを行政が支援するかたちが徐々に出てきつつある。地方のことは地方が自ら考え、行動し、責任を持つ時代を実現するために、今後とも努力していきたい。